
以前このブログでIT技術者の人生について書きましたが、IT技術者のキャリアパスを計る上で資格というものにフォーカスして考えてみたいと思います。
IT技術者が資格として意識するのは概ね以下の2種類に分けられます。
- ベンダー系資格
- 公的資格
ベンダー系資格はOracle、Microsoft等多くのPJで使用されているインフラのベース知識を代替したり、CISCOやミドルウェアパッケージの独自資格等特定の仕事を行うために必要な資格などがあります。これらは必要に応じて取得したり、個人として伸ばしていきたいスキルを勉強するモチベーションとして取得したり、効果的に働いているように感じます。
一方、公的資格は経済産業省が主管している情報処理技術者試験が最も有名で、多くのIT企業が昇格基準やキャリアパスの達成度合いを確認する資格として利用されています。
1年目、2年目のITエンジニアにとって、情報処理技術試験は自分の知識レベルをITエンジニアのレベルに持ち上げる指標として十分に役割を果たしていると思います。
しかし、中堅以降のITエンジニアにとって情報処理技術者試験がキャリアを形成する手助けになっているかと言うと皆無に等しいでしょう。
もちろん中堅以上のITエンジニアでないと合格が難しい高度レベルの情報処理技術者試験も用意されていますが、単純に特定分野の知識レベルの有無を問われる試験に合格するために勉強するという試験になっています。
中堅以上のIT技術者は、絶えず新しい技術を用いたITシステムに向き合っていかなければなりません。また、一度特定分野の知識レベルを勉強したからといって2,3年後にそれができるわけでもないし、またすべての技術を習得しようとしたらいくら時間が合っても足りません。
以前書いたように、中堅以上の技術者は経験と広く浅い知見を持って自分のパワーのかけどころをコントロールする技術と資質、それを使った高度な判断が求められます。
それは情報処理技術者試験の肩書きでは到底判断できないものであり、それが会社としての判断基準であることとの矛盾が出ています。かく言う自分が経営する会社でも情報処理技術者試験を昇進基準にしていますが、中堅以上の資格要件はあまり機能していないことを実感しています。
世界に目を向けてみると、アメリカのProfessional Engineer (PE)、イギリスのCharters Engineer(CE)等の資格が統一資格として定義されています。
特にアメリカのPEはITに関する業務を完遂する能力を持つことを法的に確認している業務独占資格(事実上)となっています。これは日本で弁護士資格を持っていないと弁護士業務ができないのと同様に、IT企業がITシステムを顧客に提供する上で、PEの承認が無ければITシステムを納入できないということを意味します。資格の取得基準も厳しく、工学系大学の卒業(理学系なども不可)、工学・数学・技術に関する基礎試験+高度技術試験+4年以上の実務経験を問われ、2,3年ごとに再審査が行われます。
これは、日本の情報処理技術者試験とは全く異なるスタンスです。
日本にも技術士と呼ばれる法的資格があります。これは工学・数学・技術の基礎知識を問うこと、高度な技術試験や口頭試験が行われること、4年以上の実務経験が問われること、CPD(継続研鑽)が義務づけられていることなど、PEに類した条件を持っています。しかしながら、この資格は日本のIT業界でほとんど知名度が無く活用されていません。
私のITエンジニアとしての経験では情報処理技術者試験より技術士の方が中堅以上エンジニアのキャリアを考える上で重要ではないかと思っています。
これまでは知名度の点で遅れを取っていましたが、今後技術士がメジャーになっていき、中堅エンジニアの一つの指針になることを期待したいです。